鎌田慧 口誅筆伐(3)ミサイルと「革命」2017年秋
日本の年間予算は4年つづきで、100億円の大台を超えた。まるでドラ息子の浪費のような膨張主義は、虚構の成長論「アベノミクス」に寄りかかった大盤振舞いだ。2018年度予算の各省庁の概算要求の総額は、101兆円。ツケを払わされるのは、未来の納税者たちなのだ。
とりわけ、防衛費の要求は総額5兆2551億円と過去最大。防衛予算は隊員の生活にかかわる「糧秣費」をふやさず、装備費をふやして米日軍需産業に貢献する。戦力増強とは武器の購入のことである。
今年の概算要求は、北朝鮮の弾道ミサイル防衛の関連費が、1791億円に達した。海上自衛隊のイージス艦に搭載する、迎撃ミサイルの改良型「SM3ブロック2A」の取得費が、657億円。航空自衛隊の迎撃ミサイル「パトリオット」PAC3の改良型205億円などが、新たな要求として入れられている。
しかし、北朝鮮ミサイル騒動で急遽導入が決定された、イージス艦のSM3を地上配備する、迎撃「イージスアショア」2基分は、このなかにふくまれていない。1基800億円といわれているのだが、数字はだされていない。
「風が吹けば桶屋が儲かる」とか。オリンピックのテロ対策として共謀罪が強行採決され、ミサイル防衛を名目に、「イージス・アショア」が購入される。さらに最新鋭ステルス戦闘機F35A162億円を、当面6機881億円(将来的には42機)、欠陥機オスプレイ1機108億円を6機(将来的には17機)、無人偵察機グローバルホーク3機で630億円を購入する構想もある。
そのすべてが、商売人トランプ大統領の「アメリカファースト」に迎合、血税が米軍需産業に垂れ流しにされそうだ。
米軍需産業への屈服
「東京新聞」(9月1日、朝刊)によれば、自衛隊が米政府から武器を調達するときに、「有償軍事援助」(FMS)という購入方法がある、という。これは、
①契約価格や納入期限は見積もりで、米政府は拘束されない。
②代金は前払い。
③米政府は契約を解除する権利がある。
というもので、購入価格が見積価格より一方的に上がっても、日本側は米政府の言い値で購入してきた。これから購入が予定されているグローバルホーク3機510億円が、当初の見積もりより23%もアップして630億円になった。それでも導入後の維持管理費を削減することでつじつまをあわせる、という。
戦争は人殺し競争、それも絶対に勝たなければならないゲームだから、独占兵器に依存しやすく、コストに関係なく所有したいため、売り手市場となる。
それも安倍内閣になってから、この「有償軍事援助」と言う名の屈辱購入が急増し、15、16年度は4000億円、17年度は3000億円、18年度の概算要求には4800億円も盛り込まれた。
グローバルホークも、SM3ブロック2もこの方式によるとされ、安倍屈辱外交では、負担を押しつけられる金額が大きくなるばかりだ。
北朝鮮は射程300~500㌔㍍の短距離ミサイル「スカッド」を約800発、日本全土のほとんどが射程圏内にはいる中距離「ノドン」200発を維持している。そしてさらにICBM(大陸間弾道ミサイル)確立ににむかう実験がおこなわれている。
それに対して米韓日政府は、非難の応酬と力の誇示(日韓合同軍事演習など)と経済的制裁で応じようとしている。安倍政権はトランプ大統領の意向を受け、お仕着せの兵器購入と軍備増大に舵を切っている。
恐怖による支配強化
軍拡競争は際限のない「矛盾」である。中国「楚」の国の武器商人が、「絶対的に鋭い」と「絶対的に堅い」と称する武器を同時に売っていた。と、顧客から「お前さんの矛を以て、お前さんの盾を突いたらどうなるのか」と質問されて、返答に困った。
という故事(韓非子)のように、ミサイル発射と防衛ミサイルの関係は絶対的矛盾である。かつて果てしない核競争の末、キューバ危機のあわや一発触発となった米ソ関係が、ケネディ大統領とフルシチョフ首相との叡智によって、辛うじて相手への攻撃を思いとどまった、とされている。
時代が下って、韓国の金大中大統領の北にたいする「北風と太陽外交」の成果もある。トランプの尻馬に乗った安倍首相のように、「これまでにない深刻かつ重大な脅威」と教条主義的に煽るだけではなく、冷静に対応しなければならない時だ。
大騒ぎの果てに、さっそく米国産の「イージス・アショア」2基購入を押しつけられた拙さは、愚かというしかない。ミサイルをミサイルで打ち落とす、とは、限りなき夢想である。同時多発の複数ミサイルを撃ち落とすためには、天文学的な金額に及ぶミサイル防衛網の建設が必要とされる。
いたずらに恐怖せず、相手に暗殺の恐怖を与えない柔軟な対応がもとめられている。
北朝鮮のミサイル発射と同時に、政府広報をもっぱらにしているNHKニュースはじめ、民放はjアラート(全国瞬時警報システム)の警戒音を響かせ、北朝鮮が「飛翔体発射」と報じて、避難勧告を繰り返し、北朝鮮の弾道ミサイル発射と軍事パレードの映像を流し続けた。
新幹線が停まり、学校が早引け、防空演習の実習、と大騒ぎ。安倍首相などは「わが国に弾道ミサイルを発射」と言い募った。しかし、なにも日本やグアム島の米軍基地を狙った発射ではない。マスコミの大騒ぎと政府の利用主義は、ことさら戦争へ傾斜を深めている。
北朝鮮の危険な実験と武力の誇示は、国際的な迷惑だが、米韓日一体化した軍事演習の強化は、火に油を注ぎかねない。侮蔑と制裁主義はなんの解決にもならない。
むしろ、北朝鮮の指導者の恐怖を緩和させ、平和交渉へ導くのが、米韓の間にある日本政府の役割のはずだ。核とミサイルに執着する金正恩朝鮮労働党委員長の恐怖は、これまで米国に敵対した一国の指導者たちが、権力の座から引きづり降ろされたり、暗殺された歴史に依っている。
米軍は海軍の特殊精鋭部隊を米韓合同訓練にいれ、無人攻撃機「グレーイーグル」配備を計画している。いままでの外国政府転覆強行への反省がない。
金正恩労働党委員長の公開活動は例年の半分以下になった、と伝えられている。米韓日から包囲されている金氏の恐怖とストレスは想像に余りある。経済的にばかりか、精神的に追い詰めるのは愚策だ。
積極的平和外交を
積極的平和主義とは、安倍首相が言うように、軍備を強め、戦闘態勢を整えることではない。平和に向かうあらゆる努力を続けることだ。安倍晋三の短慮がもっとも危険である。
「人づくり革命」などと過激なことをいうのなら、「平和づくり革命」でもやってみよ。
(現代の理論 2017秋号)
*アイキャッチ画像は Wikimedia Commons より


