鎌田慧 口誅筆伐(1) 沖縄に襲いかかる安倍政権(2017年春)

侵略は許さない

 地域住民のほとんどが、県政トップの知事を先頭に地元市長とともに、声を大にして叫んで抵抗しても政府は歯牙にもかけず、自分たちの欲望を達成しようとしている。これは侵略といって間違いない。沖縄(・高江のヘリパッド建設(米国との約束に合わせた日程だったため粗製濫造、目下、手直し工事中)と辺野古の米軍新基地工事強行は、沖縄のこころを踏みにじって余りある。
 「辺野古が唯一」というのは、半世紀も昔の米国の計画にひれ伏す怠慢である。なぜ今あらためて沖縄に海兵隊の基地をつくる必要があろうか。危険な普天間は寿命がきたのだから。閉鎖すればいいだけのことなのだ。その議論を抜きにした工事の強行は認められない。
 高江地区の工事は、「やんばるの森」と呼ばれてきた、世界的にも貴重多様な生物が棲息する亜熱帯湿潤の森が、チェーンソーで乱伐され、自然環境に大打撃を与えた。自然保護に気を遣う米国内では、けっして許されない蛮行である。
 この自然破壊と危険なヘリパッドの建設にたいして、抵抗運動の先頭にたっていた、山城博治・沖縄平和運動センター議長の逮捕・監禁は、安部官邸の運動抑圧の露骨な野望によっている。
 器物破壊、障害、威力業務妨害など、おどろおどろしい罪をなすりつけ、たらい回しの逮捕を繰り返した。拘留は四か月(執筆時)におよび、起訴後も、「証拠隠滅」を理由に、運動から隔離するための不当な弾圧である。
 あたかも、民族抵抗運動を率いた政治犯への弾圧にたいして、「ヤマト」に住むわれわれは、この沖縄闘争を孤立させない運動をどうつくるか、それが問われている。
 一つは現地に駆けつけピケに加わることである。いまヤマト出身者で高江、辺野古の前線にいるのは、各地から個人参加した定年退職者たちである。棒材
 もう一つは、東京および各地域での集会とデモを多発させることである。沖縄闘争が「本土」において、反戦・派兵反対、脱原発さらには反共謀罪運動のような切実感がないのは、沖縄の苦渋にたいする理解と感性がたりないからである。沖縄の抵抗闘争を見捨てて、日本の人権、民主主義はありえない。沖縄に思いが及ばない運動は衰弱していくだろう。

石垣島の島ぐるみ闘争

 高江、辺野古が同時に攻撃されている裏側で、着々とすすめられているのは、宮古、八重山諸島での自衛隊基地建設の策動である。与那国島への沿岸警備隊配置を突破口として、宮古、石垣島に、地対艦、地対空ミサイルを配備(当面、自衛隊員1300~1400人)する計画が明らかになっている。
 宮古と石垣の市長は、「防災支援」との虚言を盾に、推進を表明している。これにたいして、石垣島では、2017年1月29日、島はじまって以来の大集会がひらかれ、島ぐるみ闘争が開始された。この時の「大会決議」は、島の歴史と現状、未来を訴え、決意を固めた見事な文章なので、ここに全文を引用し、石垣闘争への理解を深めて頂きたい。

 【この我々の石垣島には2万5000年以上も前から人間が住んできました。青い空、広い海、なだらかな山々に囲まれ、人々はやさしく穏やかな生活を連綿と重ねてきました。特に於茂登(おもと)岳は八重山信仰の中心で、その主神はオモトテラスが人々を見守ってきました。様々な艱難辛苦に際しては、人々は静かな祈りの歌をうたい清らかな祈りの舞をまって耐え、そして深い命をしなやかに営んで来ました。
 こんな石垣島へ突然降って湧いたこの度の自衛隊配備問題。しかも、それは島の住民を守るのではなく、中央の日本本土の防衛のためこの石垣島を「捨て石」とし、防衛の「盾」とするためのものである事が明らかです。先の沖縄戦の再来です。そして、こともあろうに石垣島の主峰於茂登山山麓の開拓村に基地を建設するというものです。こんなことを受け入れるわけにはいきません。】

抵抗の現場を創出せよ

【もしもそれを受け入れるならば我々は日本本土のために引き起こされた戦争によって島々を破壊され全滅するか、あるいは難民の運命をたどるしかありません。この状況に何としても歯止めをかけ、それを転換しなければなりません。そのために我々は無謀な計画に反対し、あらゆる方法を探りそれを発明工夫して抵抗の現場を創出してなければなりません。世界各国が核兵器をはじめとする様々な武器を光らせながら互いに対峙している現在、このような小さな島からミサイルという新たな武器をもってその状況へ割り込むことは愚の骨頂です。それは島の破滅と直結するだけです。
 従って我々はこのような状況を招いた現石垣市長の横暴、その不明を弾劾し、政府にたいして「石垣への自衛隊配備を即時中止し、平和外交に路線を変更するよう」強く要求するものです。そして我々は自らにたいしては、この石垣島の安全と静謐な生活を求め続け活動するよう、この場で強く誓い合います。以上のことをこの市民大集会において参加者全員の総意のもと決議いたします。】

歌い、踊り、祈りの島

 石垣は観光の島であり、農業の島だ。パインナップル、マンゴーなどの宝庫でもある。
 そこへ異形のミサイルを中国に向けて並べ立てるなど、この決議文が指摘するように、「愚の骨頂」としかいえない。歌い、踊り、祈りを捧げていれば、戦争にはならない。
 この決意を固めた石垣のひとびとの絶対平和主義は、「戦争による経済」への道に復帰しようとする、トランプアベノミクスへの静かにして強靭な、抵抗の精神である。

(現代の理論2017春号)

(アイキャッチ画像は Wikimedia Commons より)