連立茶番劇は 第二幕へ

運営委員・佐々木希一

 「物価高対策は民間の賃上げが王道で、民間が賃上げしない代わりに、減税によって手取りを増やすのは愚策そのもの」と断じたのは、『給料の上げ方―日本人みんなで豊かになる』(2023年4月東洋経済新報社刊)の著者デービッド・アトキンソンだ。

 国民民主党の「年収の壁」引き上げ要求は、「減税で給料を増やす」ことだ。だが減税で手取りを増やせば、膨大な赤字国債を抱える国の財政をもっと悪化させ、円安も進んで輸入品が高騰し、国内の物価をまた押し上げる悪循環を生む。少なくともそのリスクは高まる。アトキンソンが「愚策」と呼ぶ所以だ。

 世界中の労働者は、物価が上がれば「給料上げろ!」と声を上げる。だがこの国では「物価が高くて大変だ」とぼやくばかりで「給料上げろ!」の声は小さい。

 かくして「賃上げ圧力」を無視できた資本=会社は、リスクを冒した自己刷新=経営努力のインセンティブを失い、低賃金の上に胡坐をかき、利益はせっせとため込んで「内部留保」なる贅肉で水太りした。「リスクを取ってチャンスをつかむ!」なんて掛け声は、いつの間にか聞こえなくなった。

 「異次元の金融緩和」で「円安」を進めたアベノミクスが、贅肉まみれの「虚弱な資本」の横行を蔓延させた。あげくに安倍政権は、経済団体との賃上げ交渉までして見せた。「円高不況」の脅しに屈して「賃上げ自粛」を唱えたひ弱な労働組合・連合は、安倍の賃上げ交渉に寄りかかり、「給料が安い!」の声に蓋をする。

 アベノミクスで甘やかされた「日の丸資本」は、「給料上げろ!」の声に蓋する労働組合・連合の助けを得て、惰眠をむさぼる。国民民主党の「減税で手取りを増やす」愚策は、「日の丸資本」と労働組合・連合が、枕を並べてむさぼる惰眠を隠す薄衣だ。

                    *

 高市首相と国民民主党の玉木代表が、いわゆる「年収の壁」を178万円に引き上げることで合意したとのニュースが流れたのは12月18日だ。

 自民・公明の連立が解消され、野党に政権奪取の好機が訪れた。だが高市自民が直面する「政治とカネ」のハナシを「議員定数削減=政治改革」にすり替えて救援に駆け付けたのが、日本維新の会だった。高市に袖にされた国民民主の玉木は、自分の腑抜けぶりを棚に上げ「維新の二枚舌」を非難してひんしゅくをかった。

 あれから2か月足らず、自民と維新の「連立の肝」だったはずの定数削減法案が継続審議になると、維新の吉村代表氏は「茶番劇。そんな国会は本当にまっぴら」と怒りをあらわしたが、連立解消などおくびにも出さなかった。どっちが茶番なんだか!

 そして一転、国民民主の要求を文字通り丸呑みした今回の合意。吉村と玉木を両脇に従えた高市の高笑いが聞こえる。これこそ茶番、その第二幕の開演だ。

 維新の吉村は、自民と維新の連立合意直前に立憲民主の野田代表が言ったことを思い出した方がいい。「臨時国会は58日間。『えいや!』で数十の議員定数を削減できるわけがない。自民が『やりましょう』と言ったら、絶対ウソだと思う。騙されちゃいけない」。

(2025年12月26日)

*アイキャッチ画像は Wikimedia Commons より