POLITICAL ECONOMY 第316号 結婚しなくてもいいんじゃないの

街角ウォッチャー 金田 麗子

要点

1、結婚・出産を望まない若者が増え、その背景には経済的な格差がある

2、「結婚・夫婦」を標準とした税・社会保障制度を個人単位へ転換する必要がある

3、一人でいてもつながれる関係をつくることが必要

 未婚の若者の35%が結婚するつもりはないと考えていることが、子ども家庭庁の若者10万人を対象にした初の大規模調査で分かったという。

 2026年5月20日~8月5日まで、15~39才の約10万人を対象に実施。結婚へのハードルとして、「安定した結婚生活を送れる収入への不安」が最多の40%、「自由な時間が無くなる・趣味時間の短縮」が34%、「結婚したいと思える人がいない」33%と続く。

 結婚より優先度が高いことは、「余暇・趣味を楽しむこと」が最多51%。「自分の体調や精神的余裕」38%、「社会的に安定した収入・仕事確保・維持すること」37%などだった。若い世代の結婚の動向が子どもの数に影響するとされていて、子ども家庭庁は今後の少子化対策の参考にしたい考えだ。

男性24%、女性21.5%が「一生結婚するつもりがない」

 続いて国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が「出生動向基本調査」を発表(2025年6月時点)。18~34才の未婚者の3割が子どもを1人も望んでいない。希望する子どもの数を未婚者に尋ねると、望まないとの回答は男性33%、女性32.4%だった。

 夫婦の理想とする子どもの数は2.18人だが、現実に予定しているのは1.95人。ためらう理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が最多。その他「これ以上育児の心理的、肉体的負担に耐えられないから」という回答も27.8%と3番目に多かった。

 この他未婚のうち「一生結婚するつもりがない」には男性24%、女性21.5%。異性との交際経験がないは男性42.3%、女性36.7%を占めた。

 結婚をする上での障壁として、「仕事上の問題」「結婚資金」が上げられるが、障壁があると言う回答割合は減少している。入れ替わるように「一生結婚するつもりがない」が増えているとして、「社人研」は経済的な問題から、未婚者の一部が結婚の意思を無くすに至った可能性を指摘する。また、結婚相手の条件として、女性に「経済力」を求める男性は55,6%、初めて5割を超えた。

 日本医療政策機構の坂元晴香氏は、読売新聞(2026年8月9日付)で、年収や雇用形態の格差が結婚出産の壁になっていると指摘。前回の「社人研」の統計分析から、「異性との交際に興味がない」男性は、年収「500万~799万円」は3.8%、300万円未満では76.4%だ。

既婚者を年収別にみると、「300万~499万円」44.5%、「500万~799万円」27.2%だが、「100万~299万」は16.6%に落ち込む。

 女性も年収200万円以上で25~39才の人を見ると、年収が高い人ほど結婚している。男性一人の収入で家計を維持するのがむずかしくなっているから、男性も結婚相手の女性に経済力を求める傾向が強まっている。

 1971~1975年生まれの男性のうち、子どもがいない割合は「800万円以上」は13%、「500万~799万円」は29.4%,「300万~499万円」40.2%、100万~299万円」では58.2%と、年収が下がるほど子供がいない割合が高くなるという。

旧来の家族モデルで固定化された税、社会保障の構造

 「現代思想」8月号は「<ソロ>の現在」を特集している。その中で丸山桂氏は「『シングル化』する社会と制度の不整合」という視点で問題提起している。家族前提の制度が長期に渡り維持された結果、税、社会保障負担の構造は旧来の家族モデルに沿ったまま固定化され、減税や給付の恩恵が特定の世帯類型や所得階層に偏っていると指摘している。  

そして以下の提言をしている。

・税制、社会保障制度を夫婦単位から個人単位への転換

・配偶者控除の代替として基礎控除の拡大、課税単位の再検討

・年金制度も病気や家族ケアなどで働けない人と、配偶者が高額所得であるために働かない人を区別し、配偶関係にかかわらず就労が困難な人の保険料負担に配慮する仕組みへの転換

・低所得者向け住宅手当制度度導入。入居差別をしない住宅供給の拡大、単身高齢者の急増に対し、身元保証や見守りサービスを含む地域福祉拡充

 また、阿部彩氏は「高齢女性の貧困と独り暮らし」を報告しているが、未婚の子どもとの同居は必ずしも貧困からの防波堤にならない。むしろ親の家を出られない子どもの経済事情、貧困が垣間見られるとしている。

 先の報告にある、結婚を望まない交際もしない層が、近い将来大きな塊のまま、貧困高齢者になる可能性もある。シングル世帯が多数になり、税、社会福祉制度の転換を行うことは必須である。

「結婚しない=孤独」ではない社会へ

 しかし格差解消して婚姻率、出生率上昇へという結論だけで良いのか。同号では戸谷洋志+松浦優は、「そもそもカップルが社会の単位が当然でいいのか」と問題提起している。「独身であるという状態が単に欠如であるというように、否定的あるいは消極的に定義され、記述されるような捉え方は独身者差別というもの」と指摘している。

 人間関係において恋愛や性愛が重要視され、それが家族形成において重要なものと位置づけられているが、他の形での愛、ないしはもう少し薄い言葉で言っていいような関係性を可能にしていく議論を開く必要性を提起している。

 読売新聞(2026年9月10日付)によると、韓国でも単身世帯が増えていて(36.6%)、最近一人暮らしをベースに、他人と必要な時だけつながる「1.5世帯」というスタイルが生まれているという。独りぼっちではない「一人でいる」関係性の構築こそ現実的なテーマだと思う。

*アイキャッチ画像は Wikimedia Commons より

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