POLITICAL ECONOMY 第317号 27年度予算は多重リスクを抱える

横浜アクションリサーチ 金子 文夫

要点

1、27年度予算は143兆円を超え膨張する可能性

2、歳入はインフレによる税収増に依存する危うい構造

3、内閣府の試算でも30年代には債務残高GDP比が再上昇

 高市政権の「責任ある積極財政」を具現化する2027年度予算編成が進行している。8月末の概算要求総額は過去最大の143兆円に達した。年末の予算案確定に向けて予算規模はさらに拡大するだろう。新規国債発行は40兆円に抑える方針というが、それが可能なのか。財源なき消費税減税は円安、長期金利急騰の「高市ショック」を引き起こすかもしれない。

歳出の膨張—青天井の戦略投資枠

 27年度概算要求総額は143.1兆円、26年度当初予算122.3兆円より20.8兆円多く、過去最大の規模だ。高市政権は、27年度当初予算は例年の補正予算も含めた内容であり、25年度補正18.3兆円と26年度当初122.3兆円を合算した140.6兆円と比べれば、大幅な規模拡大ではないと説明している。しかし、おそらく143.1兆円規模では収まらないだろう。少なくとも三つの問題がある。

 第一に、今回予算規模が拡大した一つの要因は、政権の目玉政策(成長戦略)を実行するための「強く豊かな日本」投資枠がシーリングなしで設定されたためだが、その合計12.2兆円がそれで収まるとは考えられない。金額を明示しない事項要求が多く控えているからだ。防衛省は、年末に安保関連3文書の改定を予定しているため、新しい投資枠はすべて事項要求として金額を計上していない。また、経産省、国交省、文科省など各省が様々な事項要求を準備している。

 第二に、長期金利上昇を反映して、国債費が膨らむ可能性がある。概算要求では、国債費は36.6兆円(債務償還20兆円、利払費16.6兆円)、26年度当初予算31.3兆円より5.3兆円ほど上積みした。利払費の想定金利は3.8%(実勢金利2.7%に1.1%上乗せ)だが、すでに実勢金利は3%を超えており、その趨勢を考慮すれば利払費の上振れはありうるだろう。

 第三に、補正予算を組まない前提の当初予算は危うい。確かに、近年の補正予算には当初予算に組み込むべき事業が紛れ込んでおり、是正する必要があるが、経済危機、自然災害、感染症など、補正予算が必要な事態も想定しておくべきであり、結果として通年の予算規模はさらに拡大するかもしれない。

インフレによる税収増頼みの歳入見通し

 歳入面では、食料品消費税減税等による5兆円の減収をどう埋めるか、財源確保策がまず問題になる。その手立ては現時点では明らかでない。

 一つ提起されているのは、租税特別措置・補助金・基金の見直しだ。日本版DOGE(政府効率化省)と銘打った取り組みがなされたが、対象となる租税特別措置120件(約1兆円)のうち、廃止が示されたのは1件のみだった。今後の査定でさらに切り込んでいくと推測されるが、他方で新設要望も打ち出されており、この作業で財源が生じるとは考えられない。

 戦略投資については、複数年度・特別会計管理、つなぎ国債発行など、一般会計から外す手法が提起されているが、見かけをつくろう姑息な策というしかない。

 結局、頼れるのはインフレによる税収の大幅な増加ではないだろうか。25年度の税収は予算78兆円が決算では84兆円に増加した。26年度予算の税収84兆円は決算では90兆円に達する見通しだ。この趨勢を考慮すると、消費税減税を織り込んだうえでも27年度の税収を90兆円台と想定しうる。これに税外収入として外国為替特別会計からの繰り入れなどを含めて10兆円ほど確保し、国債40兆円を加算すれば、総額140兆円台が達成されることになる。かなり甘い見通しだが、歳出規模がこれ以上膨らまなければ。27年度に関してはこれで乗り切れるかもしれない。仮にそれ以上膨らんだ場合は国債の増発が避けられず、「高市ショック」に見舞われる可能性がある。

数年は乗り切れても30年代に財政危機は深刻化

 27年度予算編成を何とか乗り切ったとしても、その先にさらに深刻な財政危機が待ち受ける。高市政権は、従来の財政健全化目標である基礎的財政収支の均衡を棚上げし、政府債務残高の対GDP比の低下を新たな目標に掲げた。しかしこの目標も、短期的には使えるが、中長期的には達成に疑問符がつく。

 高市政権の成長戦略は、危機管理投資・成長投資を官民連携して推進し、潜在成長力を引き上げ、経済成長、税収増、財政安定を実現するというものだ。しかし、政府主導の投資事業に民間資本がどれだけ乗ってくるか、巨大半導体事業ラピダスの現状を見ても簡単な話ではないだろう。また、危機管理投資といった安全保障の性格の強い事業がどれだけ収益性をもつかも疑問だ。市場原理よりも国家原理が優先する成長戦略は、自動的に経済成長を実現するものではない。

 内閣府の中長期経済見通しでは、成長戦略実現ケース、成長戦略一定実現ケース、現状投影ケースの3パターンを設定し、政府債務残高対GDP比の動向を推計しているが、現状投影ケースは2030年度以降、また一定実現ケースでも30年代後半以降、対GDP比は上昇に転じる、つまり財政危機が深まると計算している。

 あと数年は乗り切れるとしても、30年代に財政危機はさらに深刻化するだろう。しかし、その時点で高市政権はすでに退場しているはずだ。だれが責任をとるのか。

*アイキャッチ画像は Wikimedia Commons より
Author 首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/105/actions/202607/28hijoukaigi.html

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