2025年7月号 参政党の「躍進」をどう考えるのか
【 寄 稿 】トランプの側に立って共通の敵と闘う逆転の発想
【 通 常 総 会 】若い仲間を増やし、新しい活動に挑戦
【 報 告 】アイヌ民族料理を味わい アイヌ文化にふれる
【 報 告 】古川純さんを偲ぶ会
参政党の「躍進」をどう考えるのか
編集委員 中川登志男
会員の皆さんのお手元にこのニューズレターが届いた頃には、第27回参議院議員通常選挙(7月20日投票)の結果が出ているだろう。だが、この原稿を書いている時点(7月14日現在)では、選挙の結果は分からない。したがって、各紙で報じられた序盤戦情勢調査の通り、参政党が選挙区と比例区でともに複数議席を獲得し、全体で十議席を超えたという前提で話を進める。
排外主義を「日本人ファースト」とうまく言い換えることで自民党や国民民主党などの支持層を取り込んだ参政党は、改選定数が2人以上の選挙区や比例区で複数の議席を獲得した(であろう)。一方、1人区では自民党支持層を侵食することで事実上の「保守分裂」となり、立憲民主党など野党の躍進に結果的に貢献した。
参院選での与党敗北を受け、石破内閣がいずれ総辞職に至る可能性もあるが、安倍政権時代の「岩盤支持層」が自民党支持から参政党支持に移ったのだとしたら、自民党内でも保守色が強い高市早苗氏を新総裁に選出し、岩盤支持層を参政党から奪い返そうとするかもしれない。
参院選で参政党や同党の候補者らは、行き過ぎた外国人の受け入れ反対、外国人の土地購入や生活保護受給の厳格化、外国人参政権反対など排外主義的な主張を繰り広げた。そうしたことが引き金となり、今回の参院選では「外国人問題」が争点に急浮上した。それを受け、参政党などのそうした主張を批判する集会が行われたり、外国人を支援する団体が排外主義に反対する声明を出すなどした。
確かに、排外的な主義・主張は問題だが、そうした政党や候補者の出現は今に始まったことでもない。政見放送で在日外国人を敵視する言動を繰り返す政党や候補者は、かなり以前から存在していた。むしろ問題の本質は、そうした主義・主張に流される有権者が増えたことだ。これまでは泡沫政党に過ぎなかったのが、比例区で野党第一党の立憲民主党や国民民主党と競り合う得票にまで至ったところに本当の問題がある。
そもそもヨーロッパでも、フランスの「国民連合」(旧・国民戦線)、イギリスの「リフォームUK」、ドイツの「ドイツのための選択肢」などといった右派ポピュリズム政党が議席を伸ばしている。日本も「国際化」が進む中で、ヨーロッパと同様の状況が生じてきたとも言える。
選挙運動に名を借りたヘイトスピーチの問題と絡め、排外主義的な言動を処罰する包括的な差別禁止法の制定を求める声も聞かれる。だが、選挙運動で特定の主義・主張を禁じるのはかなりハードルが高いし、警察が街頭演説を監視してヘイト言動があったら直ちに中止させ、時に候補者らを現行犯逮捕するといった対応はまず不可能だ。できたとしても事後的な対応にとどまる。何より、「日本人ファースト」の参政党が与党になれば、逮捕され処罰されるのは「反日的」な主義・主張の政党や候補者となろう。
差別や排外主義の背景にあるのは格差・貧困の問題である。それが移民や外国人が仕事を奪うなどといった主張に結び付きやすい。社会政策などを通じて所得の再分配を進め、格差・貧困を是正していくことが参政党対策の本丸ではなかろうか。
(アイキャッチ画像は Wikimedia Commons より)


