森の人々ピグミー

ゴリラの追跡にはピグミーは必要不可欠

 ピグミーは決して迷わない。数㌔㍍続くゾウ道であっても、それぞれのゾウ道がどこにつながっているか熟知している。仮に彼らにとってなじみのない森であっても、キャンプを出発して森を散々に歩いた後であっても夕方には同じ場所へ無事戻る。過信して一人で歩いてはいけないのだ。これはもし森の中でマルミミゾウやヘビに出くわしたときの対処としても重要なことである。
 ぼくは長年彼らと森での生活を共にしてきたが、この能力が不思議で仕方がなかった。何年かけて修行しようと思っても、到底追いつくことができない。太陽の方角とか風向きとか、ぼくでもわかりそうな手法があるのか。しかし彼らは曇りの日でも雨の日でも迷わない。「森の中の道」と「いま自分がいる場所」を確実に知っている。全体イメージの優れた把握力とその記憶力、それがどうも秘訣のようだ。多くの先住民は、歩いているときに前方の木の感じや枝の張り方など複合総体を頭の中に入れておくのだという。

いまでも素敵な笑顔を忘れていない先住民の子どもたち

森での技能や知識は教科書で教わるものではない。年長者あるいは親から学ぶ場は教室の中ではなく森だ。しかし国際的な近代学校教育の普及に伴い、先住民の子どもはかつてのように森に長く滞在する機会が少なくなった。結果は明瞭である。森の伝統的知識や技能が若い世代に伝承されない事態が続出しているのである。文字の読み書きができ、学校での成績はよくても、森の植物の名前は知らない。動物も追いかけることができない。
 現時点での中高年世代の先住民は、辛うじて親から森のことを学んだ世代である。森での伝統的技能や知識を維持しつつ、町で手に職を得ている先住民も出てきている。それもいまや「新しい生き方」の一つであろう。子どもの中には学校は嫌いだが森に行くことは大好きな子もいる。学校のプレッシャーから解放されて、こうした子どもがのびのびと暮らせる時間は来ないのであろうか。

撮影:西原智昭(日本森林管理協議会事務局長・野生生物保全協会自然環境保全研究員)

■アーカイブ 先住民族・自然環境・野生動物保護
https://gendainoriron.org/ippankizi/senjuu-minzoku/

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